ネットワークで使われるケーブルには大きく3種類があります。オフィスや家庭のLANで広く使われる ツイストペアケーブル、長距離・大容量通信に使われる 光ファイバーケーブル、そして有線テレビやバス型ネットワークで使われた 同軸ケーブル です。それぞれ信号の伝え方・伝送距離・コストが異なります。用途に合ったケーブルを選ぶことが、安定したネットワーク構築の第一歩です。
はじめに
電気信号の記事では、データが電圧の高低に変換されてケーブルを流れることを学びました。入門編「ハブ」でも登場したツイストペアケーブルは「2本の電線をねじり合わせたケーブル」と紹介しましたが、なぜねじるのか、どんな種類があるのかまでは触れていませんでした。今回はケーブルの種類を整理し、それぞれの特徴と使い分けを理解します。
ツイストペアケーブル ― LAN内の標準ケーブル
ツイストペアケーブル(Twisted Pair Cable)は、2本の銅線をらせん状にねじり合わせたものを複数束ねたケーブルです。家庭やオフィスのLANで最も広く使われています。
| 用語/英単語 | 意味 | イメージ・補足 |
|---|---|---|
| twisted | ねじれた・よじれた | 2本の電線をらせん状に巻き合わせた構造 |
| pair | 対(つい) | 2本1組の電線 |
なぜねじるのか
2本の電線をねじり合わせる理由は ノイズへの対策 です。電流が流れるケーブルの周囲には磁場が発生し、近くを通る他のケーブルの信号に干渉(ノイズ)を与えることがあります。これを クロストーク といいます。
2本の電線をねじり合わせると、各電線が受けるノイズが交互に逆向きになります。逆向きのノイズは互いに打ち消し合うため、信号への影響が最小化されます。ねじる間隔(ツイスト率)が多いほどノイズへの耐性が高まります。
| 用語/英単語 | 意味 | イメージ・補足 |
|---|---|---|
| クロストーク / Crosstalk | cross=交差 / talk=信号; 隣のケーブルの信号が干渉して混入するノイズ | 隣の席の話し声が電話の受話器に入り込むようなもの |
UTPとSTP
ツイストペアケーブルには UTP(シールドなし) と STP(シールドあり) の2種類があります。
| UTP | STP | |
|---|---|---|
| 正式名称 | Unshielded Twisted Pair | Shielded Twisted Pair |
| シールド | なし | あり(アルミ箔や金属網で覆われている) |
| ノイズ耐性 | 低め | 高い |
| 価格 | 安価 | 高価 |
| 主な用途 | 家庭・一般オフィス | 工場・病院など電磁ノイズが多い環境 |
シールド とは、ケーブルの外側を金属箔や金属網で覆い、外部からのノイズを遮断する仕組みです。外部の電磁波が内部の信号線に影響を与えにくくなります。家庭やオフィスではUTPで十分ですが、工場の機械や医療機器など強い電磁ノイズが発生する環境ではSTPが使われます。
カテゴリ規格
ツイストペアケーブルには カテゴリ(Cat) と呼ばれる規格があり、数字が大きいほど高速・高性能です。
| カテゴリ | 最大伝送速度 | 最大周波数 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Cat5e | 1Gbps | 100MHz | 家庭・小規模オフィス |
| Cat6 | 1Gbps(最大10Gbps※) | 250MHz | オフィス・データセンター |
| Cat6A | 10Gbps | 500MHz | データセンター・高速LAN |
| Cat7 | 10Gbps | 600MHz | データセンター・産業用途 |
| Cat8 | 25〜40Gbps | 2000MHz | データセンター・サーバー間接続 |
※Cat6は55m以内の短距離なら10Gbps対応
現在、家庭・オフィスで最も広く使われているのは Cat5e または Cat6 です。購入時に「LANケーブル」として売られているものの多くはこのカテゴリです。速度やコストのバランスがよく、一般的な用途には十分です。
コネクタは RJ-45 と呼ばれる台形型で、最大伝送距離は100mです。
光ファイバーケーブル ― 長距離・大容量通信のスタンダード
光ファイバーケーブルは、電気信号ではなく 光(レーザー光や発光ダイオードの光) でデータを伝えるケーブルです。ガラスやプラスチックでできた細い芯(コア)の中を光が反射しながら進みます。
図:光ファイバーケーブルの断面構造(コア・クラッド・被覆)
光ファイバーの特徴は3つあります。
①長距離通信が可能 電気信号(ツイストペアケーブル)は100mで限界ですが、光ファイバーは種類によっては数十km〜数百kmまで延ばせます。都市間の幹線や海底ケーブルに使われているのもこのためです。
②ノイズへの耐性が高い 光は電気と違い、電磁ノイズの影響をまったく受けません。電磁波が飛び交う工場内や、電力線の近くでも安定した通信が可能です。
③大容量通信が可能 電気信号の記事で学んだように、データは「オン・オフ」の切り替えの繰り返しで送られます。つまり、単位時間あたりに切り替えられる回数が多いほど、多くのデータを送れることになります。光は電気信号よりもはるかに高速に点滅を切り替えられるため、同じ1秒間でより多くの情報を詰め込めます。1秒間に100回しか点滅できない懐中電灯と、100万回点滅できる懐中電灯を比べるようなイメージです。現代のインターネットの幹線を支えているのは光ファイバーです。
シングルモードとマルチモード
光ファイバーには シングルモード と マルチモード の2種類があります。
| シングルモード(SM) | マルチモード(MM) | |
|---|---|---|
| コアの直径 | 約9μm(細い) | 約50〜62.5μm(太い) |
| 光の通り方 | 1本の経路 | 複数の経路 |
| 伝送距離 | 数十〜数百km | 数百m〜数km |
| コスト | 高価 | 安価 |
| 主な用途 | 都市間・海底ケーブル | データセンター内・建物内 |
シングルモードは光が1本の経路だけを通るため、信号の乱れが少なく長距離向きです。マルチモードは複数の経路を通るため信号がわずかに乱れますが、短距離であれば問題なく、コストが安いためデータセンター内の接続に使われます。
同軸ケーブル ― バス型ネットワーク時代の主役
同軸ケーブルは、中心の銅線の周りを絶縁体・金属網(シールド)・外部被覆で覆ったケーブルです。「同軸(coaxial)」とは、中心の信号線とシールドが同じ軸の上にあるという意味です。
入門編「バス型ネットワーク」で登場した 10BASE5(イエローケーブル) と 10BASE2(シンイーサネット) がこれにあたります。現在はLANでほぼ使われなくなりましたが、有線テレビ(CATV)やアンテナ接続には今も広く使われています。
| 用途 | 説明 |
|---|---|
| 有線テレビ(CATV) | テレビのアンテナケーブルとして今も広く使用 |
| インターネット接続 | ケーブルテレビ会社のインターネット回線に使用 |
| ネットワーク(過去) | バス型ネットワークの幹線(現在はほぼ使用されない) |
3種類のケーブルを比較する
| 比較項目 | ツイストペアケーブル | 光ファイバーケーブル | 同軸ケーブル |
|---|---|---|---|
| 信号の種類 | 電気信号 | 光 | 電気信号 |
| 最大伝送距離 | 100m | 数km〜数百km | 185〜500m |
| 伝送速度 | 〜40Gbps(Cat8) | 数Tbps | 〜10Mbps(旧規格) |
| ノイズ耐性 | 中(STPなら高) | 最高(電磁ノイズ不影響) | 高(シールドあり) |
| コスト | 低〜中 | 高 | 中 |
| 主な用途 | 家庭・オフィスのLAN | 幹線・海底ケーブル・DC内 | 有線テレビ・アンテナ |
まとめ
ケーブルには3種類あります。ツイストペアケーブルは2本の銅線をねじり合わせてノイズを打ち消し、家庭・オフィスのLANで標準的に使われます。カテゴリ規格(Cat5e〜Cat8)で速度が決まり、最大伝送距離は100mです。光ファイバーケーブルは光でデータを伝え、長距離・大容量・ノイズ耐性に優れ、インターネットの幹線や海底ケーブルに使われます。同軸ケーブルはバス型ネットワーク時代の主役でしたが、現在のLANでは使われず、有線テレビやアンテナ接続に残っています。
用語表
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ツイストペアケーブル(Twisted Pair Cable) | 2本の銅線をらせん状にねじり合わせたケーブル。家庭・オフィスのLANで標準的に使用 |
| クロストーク(Crosstalk) | 隣のケーブルの信号が干渉して混入するノイズ。ツイストすることで軽減できる |
| UTP(Unshielded Twisted Pair) | シールドなしのツイストペアケーブル。家庭・一般オフィスで広く使用 |
| STP(Shielded Twisted Pair) | シールドありのツイストペアケーブル。ノイズが多い環境向け |
| カテゴリ(Category) | ツイストペアケーブルの性能規格。Cat5e・Cat6・Cat6Aなどがある |
| 光ファイバーケーブル(Optical Fiber Cable) | 光でデータを伝えるケーブル。長距離・大容量・電磁ノイズ不影響 |
| シングルモード(Single Mode) | 光が1本の経路を通る光ファイバー。長距離向き |
| マルチモード(Multi Mode) | 光が複数の経路を通る光ファイバー。短距離・低コスト向き |
| 同軸ケーブル(Coaxial Cable) | 中心の信号線をシールドで覆ったケーブル。有線テレビやアンテナ接続に使用 |