この記事でわかること
- スター型ネットワークとはどんな構造か
- バス型との構造の違い
- スター型のメリットとデメリット
- ハブとスター型の関係
- なぜスター型が主流になったのか
はじめに
前回の記事では、バス型ネットワークの「ケーブルが1か所切れると全体が止まる」問題を解決した機器として、ハブを紹介しました。
ハブを使うと、各パソコンが自分専用のケーブル1本でハブにつながる形になります。実はこの接続の形そのものに名前があります。それがスター型ネットワーク(Star Topology) です。
「Topology(トポロジー)」とは、ネットワーク機器同士がどのようにつながっているかという「並び方・配置」のことです。バス型もスター型も、トポロジーの一種です。
スター型ネットワークとは
スター型ネットワークとは、中心に1台の機器(ハブなど)を置き、そこから各パソコンへケーブルを1本ずつ伸ばす構成のことです。
「Star(星)」という名前は、上から見た形に由来します。中心から四方八方にケーブルが伸びる形が、星の絵を描いたときの放射状のラインに似ているためです。
[注意!] 上の画像では星型のイメージが付きやすいようにあえて台のパソコンを載せていますが、台数は関係ないです。2台であっても10台であってもハブからケーブルが伸びていればスター型です。
バス型との構造の違い
バス型とスター型を並べて見てみましょう。
バス型は、1本の共有ケーブルにすべての機器がぶら下がる構造です。電気信号はそのケーブルの上を端から端へ走り、接続されているすべての機器に届きます。ケーブルは1本で済むシンプルさが魅力でしたが、その1本が全員の命綱でもありました。
スター型は、中心の機器から各パソコンへケーブルが1本ずつ伸びる構造です。パソコンどうしが直接ケーブルでつながるのではなく、必ずハブを経由して通信します。ケーブルの本数は増えますが、それぞれが独立した回線になります。
電車の路線に例えると、バス型は「1本の路線にすべての駅が並ぶ路線」で、スター型は「すべての路線が1つのターミナル駅に集まる路線」のイメージに近いです。ターミナル駅に相当するのがハブです。
スター型のメリット
断線の影響が1台に限定される
バス型では1か所の断線が全体を止めましたが、スター型では切れたケーブルにつながっている1台だけが孤立します。他のパソコンはそれぞれ自分専用のケーブルでハブとつながっているため、まったく影響を受けず、通信を続けられます。
たとえばオフィスで10台のパソコンがスター型でつながっている場合、1本のケーブルが抜けたり断線したりしても、残り9台は何事もなかったかのように動き続けます。第8回のハブの記事で詳しく説明した通りです。
障害箇所の特定と対応がしやすい
バス型で断線が起きると、1本の長いケーブルのどこで断線しているかを探して歩き回る必要がありました。人が踏んでいたり重たいものが乗っていたり、くらいであればいいですが、天井裏までケーブルが伸びている場合、ネズミにやられた可能性も考えられ、原因となっている場所を特定するが非常に難しいのです。
スター型の場合、ハブには各ポートの通信状態を示すランプ(リンクランプ)がついています。問題が起きているポートのランプを見れば、どの機器・どのケーブルに問題があるかすぐに特定できます。あとはそのケーブルを交換するか、その機器を調べるだけです。10台のうち1台が止まっても、残りの9台への影響を気にせずに落ち着いて対処できます。
スター型のデメリット
ハブが止まると全体が止まる
スター型の最大の弱点は、中心に置かれたハブです。すべての通信がハブを経由するため、ハブが故障したり、誤って電源を抜いてしまったりすると、接続しているすべての機器が通信できなくなります。
バス型では「共有ケーブルの断線」が全体を止めるリスクでした。スター型ではそのリスクを排除した代わりに、「ハブの故障」という新しい全体停止のリスクが生まれています。問題を起こす場所がケーブルからハブへ移っただけで、「1か所の障害で全体が止まりうる」という構造的な弱点は残っています。
【参考】このような「その場所が止まると全体が止まる」ポイントのことを、単一障害点(SPOF:Single Point of Failure) と呼びます。ハブはスター型ネットワークにおける単一障害点です。実際の現場では、ハブを2台用意して片方が壊れてももう片方が動き続けるやりかたをとることでこのリスクに対応します。
ケーブルの本数とコストが増える
バス型は1本のケーブルで複数台をつなげましたが、スター型では機器の台数分のケーブルが必要です。パソコンが10台あれば10本、20台あれば20本です。
配線の手間やケーブルをまとめるための部材なども増えます。ネットワークの規模が大きくなるほど、この差は無視できなくなります。
なぜスター型が主流になったのか
現在、企業のオフィスや学校など、私たちの身の回りにあるネットワークのほぼすべてはスター型です。バス型はほとんど見られなくなりました。
最大の理由は管理のしやすさです。
ネットワークの規模が大きくなると、接続する機器の台数は数十台・数百台になります。バス型では、どこか1か所で問題が起きただけで全体が止まり、しかもどこで問題が起きているかを探すのに時間がかかります。
スター型では、どこかが止まっても影響は局所的で、ハブのランプを見れば問題箇所もすぐわかります。ケーブルのコストは増えましたが、「止まりにくく、止まっても早く直せる」ことの価値がそのコストを大きく上回ったため、スター型が事実上の標準として広まりました。
スター型でも残る問題
スター型はバス型の弱点をいくつか克服しましたが、ハブの仕組み上、まだ解決できていない問題があります。
ハブに入ってきた電気信号は、接続されているすべてのポートへ一斉に流れ出します。パソコンAがパソコンBにだけ送りたいデータを送っても、ハブはCにもDにも同じ信号を届けます。
受け取った機器は「自分宛てかどうか」を確認して、宛先が違えばそのデータを捨てますが、例えばパソコンが100台つながっているとすると、単純計算で自分に送られてくる情報の99%は無駄な情報ということになります。この99%が無くなればパソコンへの負担は大幅に減りますし、ケーブルを流れる電気も大幅に減るため、衝突する可能性を減らすことが出来ます。
「特定の相手だけに届ける」ことは、スター型+ハブの組み合わせではまだできません。この問題は次回以降で登場する別の機器が解決します。
まとめ
| 比較項目 | バス型 | スター型 |
|---|---|---|
| 構造 | 1本の共有ケーブル | 中心機器から1本ずつ |
| ケーブル本数 | 少ない | 機器の台数分 |
| 断線の影響 | 全体が止まる | 1台だけ孤立 |
| 障害箇所の特定 | 難しい | ハブのランプで比較的簡単 |
| 全体停止のリスク | ケーブルの断線箇所 | 中心機器(ハブ)の故障 |
| 主な用途 | ほぼ使われなくなった | 現在の標準 |
スター型は「断線で全体が止まる」問題と「障害対応の難しさ」を解決し、現在のネットワークの標準になりました。ただし中心機器への依存(単一障害点)とケーブルコストの増加はトレードオフ(相容れない関係のこと)がとして存在します。また「信号が全機器に届いてしまう」問題はまだ手つかずのままです。
次回は、この残った問題を解決する機器を紹介します。