この記事でわかること
- ネットワーク部:IPアドレスの前半部分で「どのネットワークか」を示す
- ホスト部:IPアドレスの後半部分で「そのネットワーク内のどの機器か」を示す
- 同じネットワーク内の機器はネットワーク部が共通で、ホスト部だけが異なる
- ホスト部がすべて0のアドレスと、すべて1のアドレスは機器に割り当てられない
- どこで区切るかは「サブネットマスク」が決める(詳細は次の記事)
はじめに
前回の記事で、IPアドレスには「どのネットワークか」を示す部分と「そのネットワーク内のどの機器か」を示す部分があると触れました。前者をネットワーク部、後者をホスト部と呼びます。
ここを理解すると、「なぜ 192.168.1.1 と 192.168.1.100 が同じネットワーク内にいるとわかるのか」「ルーターがどうやって転送先を判断しているのか」が見えてきます。
郵便局の例で整理する
前回の記事で郵便局の例を使いました。A地区の郵便局員はA地区の配達を担当し、B地区宛の手紙はB地区の郵便局へ転送するという話でしたね。
この例をIPアドレスに当てはめると、こうなります。
郵便局の住所体系 IPアドレスの構造
─────────────────────────────────────────────────
「A地区の郵便局」 ←→ ネットワーク部
(担当エリアの識別) (どのネットワークか)
「郵便局内の席番号」 ←→ ホスト部
(郵便局内の個人識別) (そのネットワーク内のどの機器か)
192.168.1.10 というIPアドレスであれば、192.168.1 がA地区の郵便局(ネットワーク部)、10 があなたの席番号(ホスト部)にあたります。
192.168.1 . 10
┌────────────┐┌──────┐
│ネットワーク部││ホスト部│
│ A地区の郵便局 ││ 席番号 │
└────────────┘└──────┘
ネットワーク部とは
ネットワーク部は、IPアドレスの前半部分で「このアドレスがどのネットワークに属しているか」を示します。
同じネットワーク内の機器は、全員が同じネットワーク部を持っています。逆に言えば、ネットワーク部が異なる機器は別のネットワークに属しています。
ルーターはパケットを受け取るたびに宛先IPアドレスのネットワーク部を確認し、「このパケットは自分のネットワーク宛てか、それとも別のネットワーク宛てか」を判断します。これがルーティングの核心です。
ホスト部とは
ホスト部は、IPアドレスの後半部分で「同じネットワーク内のどの機器か」を区別するための番号です。
Host(ホスト):もともとは「もてなす人・主人」を意味する言葉。ネットワークの文脈では「ネットワーク上に存在する機器」を指します。
同じネットワーク内では、ホスト部の数値がそれぞれ異なります。ネットワーク部が「どの郵便局か」を示すなら、ホスト部は「その郵便局内の席番号」にあたります。
具体例:自宅ネットワークで見てみる
自宅のネットワークを例に、ネットワーク部とホスト部の関係を確認しましょう。
機器 IPアドレス ネットワーク部 ホスト部
────────────────────────────────────────────────────────
ルーター 192.168.1.1 192.168.1 1
PC 192.168.1.10 192.168.1 10
スマートフォン 192.168.1.20 192.168.1 20
タブレット 192.168.1.30 192.168.1 30
ネットワーク部 192.168.1 はすべて共通です。これが「同じネットワークに属している」ことを示しています。ホスト部(最後の数値)だけが異なり、これで機器を区別しています。
一方、Googleのサーバーは 142.250.xx.xx のようなアドレスを持っています。先頭の数値群が自宅の 192.168.1 とは全く異なり、別のネットワークに属していることがわかります。
🏠 自宅のネットワーク(ネットワーク部:192.168.1)
192.168.1.1 ← ルーター
192.168.1.10 ← PC
192.168.1.20 ← スマートフォン
🌐 Googleのネットワーク
142.250.xx.xx ← Googleのサーバー(ネットワーク部が異なる)
ルーターはネットワーク部を見て転送先を決める
ルーターがどのように判断しているか、2つのケースで確認しましょう。
ケース①:PC → Googleのサーバー(別ネットワーク宛て)
PCからGoogleへパケットを送ると、自宅ルーターは宛先 142.250.xx.xx のネットワーク部を確認します。自宅のネットワーク部 192.168.1 とは異なるため、「外部へ転送すべきパケット」と判断してインターネット側へ送り出します。
PC(192.168.1.10)→ 自宅ルーター
↓ 宛先のネットワーク部を確認
↓「192.168.1 ではない → 外部へ転送」
──────────────────▶ インターネットへ
ケース②:PC → スマートフォン(同じネットワーク宛て)
PCからスマートフォン(192.168.1.20)へパケットを送ると、ルーターは宛先のネットワーク部が 192.168.1 と一致することを確認します。「自分のネットワーク内の機器宛てだ」とわかり、インターネットへ転送せずスイッチ経由でスマートフォンへ直接届けます。
PC(192.168.1.10)→ 自宅ルーター
↓ 宛先のネットワーク部を確認
↓「192.168.1 と一致 → 同じネットワーク内」
──────────────────▶ スイッチ経由でスマートフォンへ
なぜ2つに分ける必要があるのか
ネットワーク部とホスト部に分ける理由は、ルーターの管理コストを現実的な規模に抑えるためです。
もし「ネットワーク部」という概念がなく、すべての機器に完全にランダムなIPアドレスが割り当てられていたとします。このとき、世界中の何十億台もの機器それぞれの場所をルーターが個別に記憶しなければ、パケットを正しく転送できません。前回の記事で「MACアドレスだけでは届かない理由」として触れた問題と同じです。
ネットワーク部・ホスト部という2層構造にすることで、ルーターは「個々の機器の場所」ではなく「ネットワーク単位の場所」だけを覚えれば済むようになります。
郵便の例に戻すと、全国の配送センターは「どの市区町村へ向かうか」だけを知っていれば荷物を転送できます。その市区町村の中のどの番地へ届けるかは、地元の配達員が担当する。役割を分担することで、それぞれが管理すべき情報量が現実的な規模に収まっています。
インターネット上のルーター → ネットワーク単位で転送先を判断
(全国の配送センター) (この市区町村の郵便局へ転送)
宛先ネットワーク内のスイッチ → ホスト部を見て最終的な機器へ届ける
(地元の配達員) (この番地の田中さんへ届ける)
使えないアドレスがある
ネットワーク部が決まると、ホスト部で使える値には2つの「予約済み」アドレスが生まれます。
ネットワークアドレス:ホスト部の全ビットが0のアドレスです。機器に割り当てるためのアドレスではなく、「このネットワーク全体」を代表する識別子として使われます。
ブロードキャストアドレス(broadcast:broad「広い」+ cast「投げる」=「広く投げかける」):ホスト部の全ビットが1のアドレスです。そのネットワーク全体へ一斉に送信するときに使います。機器への個別割り当てには使いません。
192.168.1 をネットワーク部とする例では、こうなります。
192.168.1.0 ← ネットワークアドレス(機器に割り当て不可)
192.168.1.1 ┐
192.168.1.2 │
... │ 機器に割り当て可能(254個)
192.168.1.253 │
192.168.1.254 ┘
192.168.1.255 ← ブロードキャストアドレス(機器に割り当て不可)
0〜255の256通りから2つが予約済みとなるため、実際に機器へ割り当てられるアドレスは 254個です。
区切り位置はどうやって決まるのか
ここまで 192.168.1 をネットワーク部、最後の1組をホスト部として説明してきました。ただし、IPアドレスだけを見ても区切り位置はわかりません。区切り位置を示すのが**サブネットマスク(subnet mask)**です。
Subnet(サブネット):sub(部分的な・下位の)+ net(ネットワーク)=「ネットワークを分割した部分的な区画」
サブネットマスクは 255.255.255.0 のような形式をしており、「どこまでがネットワーク部か」をIPアドレスとセットで示します。
たとえば、IPアドレス 192.168.1.10 にサブネットマスク 255.255.255.0 が組み合わさることで、「最初の3組(192.168.1)がネットワーク部、最後の1組(10)がホスト部」と確定します。サブネットマスクがなければ、192.168.1.10 を見ただけではどこが区切り位置なのかわかりません。
詳しい仕組みは次の記事で扱います。
よく見かける区切り方
サブネットマスクの値によって、ネットワーク部とホスト部の長さが変わります。よく使われる3パターンを整理します。
| サブネットマスク | ネットワーク部 | ホスト部 | 割り当て可能な機器数 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 255.255.255.0 | 最初の24ビット | 最後の8ビット | 254台 | 一般家庭・中小企業 |
| 255.255.0.0 | 最初の16ビット | 最後の16ビット | 65,534台 | 大企業・大学 |
| 255.0.0.0 | 最初の8ビット | 最後の24ビット | 16,777,214台 | 大規模ISP・データセンター |
自宅のネットワークでよく使われるのは 255.255.255.0 です。最初の3組(24ビット)がネットワーク部で最後の1組がホスト部になり、最大254台の機器を収容できます。
一方、大企業や大学では 255.255.0.0 が使われることがあります。ホスト部が16ビット分あるため、65,534台という膨大な機器を1つのネットワーク内に収容できます。さらに大規模なISP(Internet Service Provider:Internet「インターネット」+ Service「サービス」+ Provider「提供する事業者」=「インターネット接続サービスを提供する事業者」)やデータセンターでは 255.0.0.0 を使い、約1,677万台という単位で管理することもあります。
なお、個人がインターネットに接続するとき契約する「プロバイダー」「回線業者」がISPにあたります。NTTやSoftBank、OCNなどが代表例です。
まとめ
- ネットワーク部:IPアドレスの前半。「どのネットワークか」を示し、同じネットワーク内の機器で共通
- ホスト部:IPアドレスの後半。「そのネットワーク内のどの機器か」を区別する
- ルーターはネットワーク部を確認して「同じネットワーク内か、別ネットワーク宛てか」を判断する
- ホスト部がすべて0のアドレス(ネットワークアドレス)と、すべて1のアドレス(ブロードキャストアドレス)は機器に割り当てられない
- 区切り位置を決めるのがサブネットマスクで、詳細は次の記事で扱う
次の記事では、サブネットマスクの仕組みを詳しく見ていきます。255.255.255.0 という数値が「最初の24ビットがネットワーク部」をどのように表しているのか、その仕組みが明らかになります。