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【第14回】干渉・ノイズとツイストペアケーブル ― 信号を乱す見えない敵への対策

結論

電気信号は、外からの電磁波(でんじは)によって乱される「干渉(かんしょう)・ノイズ」という問題を抱えています。その対策として広く使われているのがツイストペアケーブルです。2本の電線をらせん状にねじり合わせる(ツイストする)というシンプルな構造で、ノイズの影響を巧みに打ち消しています。


はじめに

前回のおさらい

前回は、電気信号が弱まる「減衰」への対策としてリピーターリピーターハブを学びました。

  • リピーター:弱まった信号を増幅して送り直す中継機器
  • リピーターハブ:リピーター機能を持ちつつ複数台を接続できるが、信号をすべてのポートに流すため衝突が起きやすいという限界がある

今回のテーマ

今回は3つの障害のうち**干渉(Interference)・ノイズ(Noise)**に向き合います。身の回りにあふれる電磁波が電気信号をどう乱すのか、そしてその対策としてLANケーブルがどんな工夫を持っているのかを見ていきます。


干渉・ノイズとは何か

身の回りは電磁波だらけ

電子レンジ、蛍光灯、スマートフォン、電源ケーブル――私たちの身の回りには、電磁波(Electromagnetic wave・エレクトロマグネティック ウェーブ)を発するものがたくさんあります。

電磁波は目には見えませんが、ケーブルの中を流れる電気信号に入り込んで、信号を乱してしまいます。この現象を**干渉(Interference・インターフェアランス)またはノイズ(Noise)**と呼びます。

イメージ:にぎやかな部屋での会話 静かな部屋なら小声でも相手に届きますが、周りでみんなが話し出すと、声が雑音にかき消されてしまいます。電気信号における「雑音」が干渉・ノイズです。本来「0」という信号を送ったはずなのに、ノイズが重なって「1」に見えてしまうようなことが起こります。

なぜ問題になるのか

ノイズによって信号が化けると、受け取った側は「0」を「1」と読んだり、「1」を「0」と読んだりしてしまいます。送ったデータと違う内容として受信されてしまうのです。これが積み重なると、ファイルが壊れたり、通信が途切れたりといったトラブルにつながります。


ツイストペアケーブル

一般的なLANケーブルの正体

普段使っているLANケーブルを切断して断面を見ると、中に細い電線が8本入っています。そしてその8本の線が、2本ずつペアになってらせん状にねじり合わされています。

このねじり合わせた(Twist・ツイスト)一対(Pair・ペア)の電線、という意味で、この構造をツイストペア(Twisted Pair)、そのケーブルをツイストペアケーブルと呼びます。

なぜ8本? 現在主流の通信方式では、4ペア(8本)を使うことで高速なデータのやり取りを実現しています。ペアの数や仕様によってカテゴリ(Category・カテゴリ)が分かれており、「Cat6」「Cat6A」といった表記をケーブルで見かけることがあります。

ねじり合わせるとなぜノイズに強くなるのか

ここがツイストペアケーブルの面白いところです。

ツイストペアでは、1本の電線で「+(プラス)の信号」を、もう1本で「−(マイナス)の信号」を、同じ内容を逆向きに送ります。受け取る側は2本の差(+と−の差)を読み取ることで、元の信号を復元します。

ここにノイズが入ったとき何が起こるかを考えてみましょう。ねじり合わせた2本の線は、ほぼ同じ方向からノイズを受けます。つまりノイズは2本に同じように乗ります。

受け取る側は「2本の差」を見るので、同じように乗ったノイズは差を取ると打ち消されてしまいます。ノイズが2本に平等に乗るからこそ、差を取ることでなかったことにできるのです。

イメージ:バランスのとれた天秤 天秤の左右の皿に、同じ重さのものを同時に乗せると、天秤は動きません。ツイストペアはこれと同じで、ノイズが2本に均等に乗ることで「差」として現れなくなります。

ツイスト(ねじり)の密度にも秘密がある

ペアをねじる間隔は、ケーブルのペアごとに微妙に変えてあります。これは、同じケーブルの中にある別のペアからの干渉(クロストーク(Crosstalk):信号の漏れ)を防ぐための工夫です。ねじりの密度を変えることで、隣のペアと「たまたま同じタイミングで干渉し合う」状況を避けています。


さらに強力な対策:シールドケーブル

ツイストペア構造だけでは防ぎきれないほど強いノイズが多い環境では、ケーブル全体をアルミ箔(はく)や金属の編組(へんそ)で覆い、外からのノイズを物理的に遮断(しゃだん)する**シールド(Shield・遮へい)**を施したケーブルも使われます。

種類 正式名称 特徴
UTP Unshielded Twisted Pair(アンシールデッド ツイストペア) シールドなし。一般的なLANケーブルはこちら
STP Shielded Twisted Pair(シールデッド ツイストペア) シールドあり。ノイズが多い環境向け

一般的なオフィスや家庭ではUTPで十分ですが、工場など電磁波が多い環境ではSTPが選ばれることがあります。


まとめ

  • 電磁波による干渉・ノイズは、電気信号を乱してデータ化けを引き起こす
  • その対策として、LANケーブルはツイストペア構造を採用している
  • 2本の線にノイズが均等に乗るため、差を取ることでノイズを打ち消せる
  • さらに強力な対策として、金属で覆った**シールドケーブル(STP)**もある

次回は3つの障害の最後のひとつ、衝突(Collision)への対策として登場したスイッチングハブを深掘りします!