結論
電気信号は距離とともに弱まる「減衰(げんすい)」という問題を抱えています。その対策として登場したのが、信号を増幅して送り直すリピーターと、それを複数台接続できるよう発展させたリピーターハブです。ただしリピーターハブには、信号をすべてのポートに流してしまうという限界がありました。
はじめに
前回のおさらい
前回は、電気信号が抱える3つの障害を紹介しました。
- 減衰(Attenuation):距離とともに信号が弱まる
- 干渉(Interference):外からのノイズで信号が乱れる
- 衝突(Collision):複数の信号がぶつかって混ざり合う
また、データの「0と1の並び」が何を意味するかは、あらかじめ決めた約束事=プロトコルにのっとるということも触れました。
今回のテーマ
3つの障害のうち、今回は減衰に向き合います。「弱まってしまった信号をどうするか」という問いへの答えが、リピーターとリピーターハブです。
減衰のおさらい
電気信号はケーブルを進むにつれてエネルギーを失い、だんだん弱くなっていきます。信号が弱くなりすぎると、受け取った側が「これは0?1?」と判断できなくなり、通信エラーが起きます。
イメージ:遠くにいる友達への呼びかけ どんなに大きな声で叫んでも、距離が離れるほど声は弱まります。そのままでは伝わらなくなってしまいます。
では、どうすれば遠くまで信号を届けられるでしょうか?
リピーター(Repeater・中継器)
発想はシンプル「途中で元気にしてあげる」
リピーター(Repeater)の「Repeat(リピート)」は「繰り返す・中継する」という意味です。弱まった信号を途中で受け取り、元の強さに増幅してから送り直す機器です。
イメージ:駅伝のたすきリレー 長距離を一人で走り続けるのは難しくても、途中で次の走者にたすきを渡せば、チーム全体として遠くまでたすきを届けられます。リピーターはまさに「中継地点の走者」です。弱まった信号を受け取り、元気な状態にして次のケーブルへ渡します。
リピーターの特徴
- ポートが2つ(入口と出口)しかない、シンプルな機器
- 信号の「内容(データ)」は一切関知せず、電気的に増幅して流し直すだけ
- ケーブルを延長するために使う、というイメージが近い
リピーターハブ(Repeater Hub)
リピーターを「多口化」した機器
リピーターは2台のコンピューター間でしか使えません。しかし実際のネットワークでは、複数台のコンピューターをつなぐ必要があります。そこで登場したのがリピーターハブです。
リピーターハブは、リピーターの「信号を増幅して送り直す」機能を持ちつつ、複数のポートを備えて複数台のコンピューターをまとめてつなぐことができます。
イメージ:増幅機能付きのタコ足配線 電源タップ(テーブルタップ)が複数の家電をひとつのコンセントにつなぐように、リピーターハブは複数のコンピューターをひとつのネットワークにつなぎます。しかも、弱まった信号を増幅してから各ポートに届けてくれます。
リピーターハブの動き方
リピーターハブには、ひとつ大きな特徴があります。それは、あるポートに届いた信号を、接続されているすべてのポートに流すという動作です。これを**ブロードキャスト(Broadcast・一斉送信)**と呼びます。
たとえば、AさんがBさんにデータを送ったとき、リピーターハブはCさんやDさんのポートにも同じ信号を流します。Bさん以外は「自分宛てではない」と判断して無視しますが、信号自体はみんなに届いてしまっているのです。
リピーターハブの限界
全員に流すから「衝突」が起きやすい
すべてのポートに信号を流すということは、複数のコンピューターが同時に送信しようとすると、信号がケーブルの中でぶつかり合ってしまいます。前回紹介した「衝突(Collision)」です。
接続台数が増えれば増えるほど、衝突の起きる確率も上がり、ネットワーク全体の速度が落ちていきます。
リピーターとリピーターハブの違いまとめ
| リピーター | リピーターハブ | |
|---|---|---|
| ポート数 | 2つ | 複数 |
| 主な用途 | ケーブルの延長 | 複数台の接続 |
| 信号の送り先 | 出口のポートのみ | 接続されたすべてのポート |
| 衝突の問題 | 少ない | 台数が増えると起きやすい |
まとめ
- 減衰への対策として、信号を増幅して送り直すリピーターが登場した
- リピーターを多ポート化し、複数台をつなげるようにしたのがリピーターハブ
- リピーターハブは信号をすべてのポートに流すため、台数が増えると衝突が起きやすくなるという限界がある
この「衝突しやすい」という問題を根本から解決したのが、スイッチングハブです。スイッチングハブについては第15回で改めて深掘りします。次回は電気信号の別の天敵、**干渉(ノイズ)**への対処法を見ていきましょう!