【第9回】ケーブル障害でネットワーク全体がダウンする問題を解決する仕組み ― スター型配線をやさしく解説

結論

ケーブル共有方式では、ケーブルのどこか1か所が壊れるだけでネットワーク全体が止まってしまいます。この問題は、スイッチングハブを中心にして、各コンピュータを個別のケーブルで放射状につなぐ「スター型配線」 にすることで解決しています。1本のケーブルが壊れても、そのコンピュータ1台が切り離されるだけで、他のコンピュータはそのまま使い続けられます。


はじめに

前回のおさらい

前回は、ケーブル共有方式の欠点②「データが関係ないコンピュータにも届いてしまう」問題を解決する スイッチングハブ について学びました。

スイッチングハブは、MACアドレス(コンピュータ固有の住所)を使って、データを宛先のコンピュータにだけ届けられる機器でしたね。

今回のテーマ

いよいよ今回は、第6回から続いてきた「ケーブル共有方式の3つの欠点」の最後、欠点③を見ていきます。

# 欠点 対応する回
データが衝突してしまう 第7回(CSMA/CD)
関係ないコンピュータにもデータが届いてしまう 第8回(スイッチングハブ)
ケーブルに障害が起きると全体がダウンする 今回(第9回)

この問題がどうして起きるのか、そしてどうやって解決するのか、一緒に見ていきましょう。


本題:スター型配線が障害に強い理由

まず、問題をおさらいしよう

ケーブル共有方式(バス型とも呼ばれます)では、1本の長いケーブルに全員がぶら下がっています。

PC-A ─┬─ PC-B ─┬─ PC-C ─┬─ PC-D
      |         |         |
   (ここが断線!)

このとき何が起きるでしょう?

電気信号は1本のケーブルを流れてきます。どこか1か所でも断線や接触不良が起きると、信号がそこで遮断されてしまいます。結果、そのケーブルにつながっているコンピュータ全員が通信できなくなります。

これは、家の廊下に1本だけ通した延長コードにたとえられます。

廊下の延長コードにテレビ、冷蔵庫、電子レンジをつないでいる。 コードのどこかが断線すると、全部の電気が止まってしまう。

1か所の問題が、全体に影響してしまうのです。


解決策:「放射状」につなぎ直す(スター型配線)

この問題の解決策はシンプルです。

「1本のケーブルに全員をぶら下げるのをやめて、各コンピュータを個別のケーブルでスイッチングハブにつなぐ」 ことです。

この配線のかたちを、スター型(星型)と呼びます。中心にスイッチングハブがあり、そこから各コンピュータへケーブルが放射状に伸びる形が、ちょうど星のように見えることからこう呼ばれます。

          PC-A
            |
PC-D ─── [スイッチングハブ] ─── PC-B
            |
          PC-C

先ほどの延長コードのたとえで言えば、こうなります。

廊下の延長コードをやめて、テレビ・冷蔵庫・電子レンジをそれぞれ壁のコンセントに直接つなぐようにした。 1か所のコードが断線しても、他の家電には影響が出ない。


スター型だと、なぜ障害が広がらないのか?

スター型では、各コンピュータがスイッチングハブと1対1のケーブルでつながっています

BさんのPCとハブをつなぐケーブルが断線しても、それはあくまでも「BさんのPCとハブの間だけの問題」です。

          PC-A ─── (正常)
            |
PC-D ─── [スイッチングハブ]    PC-B ─── (ここが断線!でも他は無関係)
            |
          PC-C ─── (正常)

A・C・Dさんのケーブルはそれぞれ独立しているため、まったく影響を受けません。Bさん1台だけが切り離される形になります。

バス型が「廊下の延長コード」なら、スター型は「各部屋に独立したコンセント」のイメージです。


「スイッチングハブ自体」が壊れたらどうなるの?

ここで鋭い方は気づくかもしれません。

「中心のスイッチングハブが壊れたら、全員つながれなくなるんじゃないの?」

その通りです。スイッチングハブは、スター型ネットワークの 唯一の急所(単一障害点) になります。

ただ、これはバス型と比べると大きな改善です。

バス型(共有ケーブル) スター型(スイッチングハブ)
ケーブル1本が壊れたとき 全員ダウン 1台だけ切り離される
中心機器が壊れたとき (中心機器がない) 全員ダウン

バス型ではケーブルのどの1か所が壊れても全体に影響しましたが、スター型ではハブが壊れない限り、1本のケーブル障害は全体に波及しないのです。

そして実際の現場では、重要なスイッチングハブは予備機を用意したり、2台を並列で動かすなど、壊れにくい工夫を重ねて使われています。


第6回からの旅をふり返ろう

第6回でケーブル共有方式の3つの欠点を紹介してから、4回かけてその解決策を学んできました。

欠点 解決策
① データが衝突する CSMA/CD(ぶつかる前に聞く、ぶつかったらランダムに待つ)
② 関係ないPCにもデータが届く スイッチングハブ(MACアドレスで宛先だけに転送)
③ 1か所の障害で全体ダウン スター型配線(個別ケーブルで障害を局所化)

そして①〜③の解決策はバラバラに存在するのではなく、現代のネットワークでは3つが同時に実現されています。 スイッチングハブを使ったスター型のネットワークは、CSMA/CDが不要なほど衝突が起きにくく、データは宛先だけに届き、1本のケーブル障害が全体に広がらない、という3拍子が揃っています。


まとめ

  • ケーブル共有方式(バス型)の欠点③「1か所の障害で全体ダウン」を解決するのが スター型配線
  • スイッチングハブを中心に、各コンピュータを個別のケーブルでつなぐことで、障害を1台だけに局所化できる
  • スイッチングハブ自体が壊れると全体に影響するが、バス型の「どこが壊れても全体ダウン」よりはるかに堅牢
  • 第6回から続いた「3つの欠点と解決策」がこれで出揃い、現代のイーサネットの基本形が見えてきた

次回からは、同じ建物内のネットワーク(LAN)を超えて、インターネットへとつながる仕組みを見ていきましょう!